JIS規格によって視覚障害者誘導用標示の突起の形状や配列は規定されましたが、設置方法や色についてはまだ未制定です。自治体や施設も様々な工夫を凝らしているようですが、全国統一されたガイドラインというものがまだ完成段階にはなく、様々な団体で研究が進められています。またバリアフリーやユニバーサルデザインもまだまだ導入時期にあり、全ての人に優しい街づくりは始まったばかりです。
それを踏まえた上で現状の問題点を幾つかあげてみたいと思います。こういった問題箇所はすぐに全てを直すというわけにはいかないのかもしれませんが、今後の留意点として知っておく必要はあると思います。(※注 掲載した写真の中にはすでに直っている箇所もあります)
● 途中でとぎれた誘導ブロック
理由はさまざまですが、誘導ブロックが途中でとぎれてしまっているところがたまにあります。目の見える人にはその先にまた誘導ブロックが続いていることがわかりますが、全盲者は、はたして道がそこで終わっているのか、真っすく進むべきなのかまるで分からなくなることがあるそうです。
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| 途中でとぎれてなおかつ段差がある |
これも水路の蓋によって途中でとぎれ、また段差もついている |
横断歩道を渡った先には誘導標示が無くなっている |
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マンホールの蓋でとぎれている。輝度でみると、ラインも分かり難い。ブロックが黄色でも輝度比がないと弱視者に対しても識別し難くくなっている |
マンホール上にも誘導ブロックを設置出来ている例。ただし、こうしたマンホールの凹凸はつまずきの原因にもなる |
● 迂回する誘導ブロック
誘導ブロックが迂回しています。前方に電柱や柱などの障害物があり、それをさけるためと思われる設置方法をした場所がたまにあります。迂回方法にもいろいろありますが、急激な迂回は、全盲者に方向感覚を失わせてしまったり、突然誘導ブロックが無くなったかのような錯覚を与えてしまうことがあるそうです。
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地下施設の蓋をさけている |
この方法がいいとは一概には言えないが、比較のために提示した |
● ドアや壁ぎりぎりまで接近した視覚障害者誘導用標示
ドアの直前まで警告ブロックが接近していると、視覚障害者誘導用標示を足裏で感じながら歩いている人は、確実にドアに激突します。観音開きのドアの場合などは特に危険な箇所になりえます。
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ドアに接近しすぎて危険 |
ドアから少し離して設置自動ドアの為、激突の危険は少ない
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まっすぐ行くと壁に激突しかも色が分かり難い |
● 誘導ブロックの上に、駐輪・看板などの障害物を置く
視覚障害者は誘導ブロック上を歩いているとき、少し気を抜いている場合があるそうです。そんなときに前方に突然障害物が置いてあった場合、確実に転倒または激突事故となり、負傷することが多いといいます。しかし、これは設置者側だけの問題とはいえず、社会のモラルが問われる問題です。
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自転車でふさがれている |
車で完全にふさがれている |
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ドアに接近しすぎて開いたドアに激突しそう |
壁ぎりぎりに設置されたブロック上に荷物が置かれている |
もとはドアを使用していたのが、使用不可になったのだろうか。当然ぶつかる |
● 横断歩道の方向が分からない
横断歩道の手前に警告ブロックが置かれている光景は多く見かけるようになりましたが、横断歩道がはたして、どちらの方向に向かってのびているのかが、全盲者には分かり難い部分があるようです。必ずしも歩道に対して直角ににのびているとは限らない横断歩道。最近では横断歩道上にも視覚障害者誘導用標示(エスコートゾーンともいう)を設置している自治体があるようです。(視覚障害とユビキタス社会)
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スクランブル交差点。視覚障害者はどの方向に向かうべきか迷いがち |
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横断歩道にも視覚障害者誘導用標示を設置した例。斜めに横断する場所でも方向が分かりやすい |
横断歩道上の視覚障害者誘導用標示であっても車が障害となるケース |
● その他
下の写真はある施設の視覚障害者誘導用標示です。誘導標示のように見えますが、使用しているのは警告ブロック(点状突起)です。ただ、この施設の場合、企画段階から視覚障害者の意見を聞いて、一番わかりやすいというものを採用したのだそうです。しかし、一般的な(JIS規格)標示方法とは異なるため、この地域以外の方からはとまどいの声も聞かれるそうです。障害者の方々の意見を聞くことは、ユニバーサルデザインの基本だと思いますが、統一感が無くてもいいのだろうか?という問題提起にはなると思います。
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誘導のための設置と思われるが、全てに警告ブロックが使われている |
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