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なぜ黄色いか?

 視覚障害者誘導用標示に「黄色」が多いのには訳があります。それは「弱視者」が視覚障害者誘導用標示を視認しやすくするためなのです。

 視覚障害者とは視覚に障害のある人のことで、視覚を持たない「全盲者」と残存視覚を有する「弱視者」に分類されます(ウィキペディア「視覚障害者」)。つまり「視覚障害者誘導用標示」とは「全盲者」と「弱視者」両方のために設置された標示ということになります。

 弱視者の視覚障害者における割合は約7割(約20万人)と言われております。弱視者の方々は全盲者と比べ、健常者とほぼ同様の生活をしているひとがほとんどですが、町並みの空間的な危険を察知しにくい場合が多く、歩道の段差、階段の踏み面などは、識別しにくい場合が多いそうです。

 最近は美観を意識した結果、地面のタイルなどと模様や色を一致させた視覚障害者誘導用標示が用いられている場所を見ることがありますが、これは「弱視者」への配慮を欠いているという批判もあります。

 全盲者は突起を白い杖などでさわりながら歩きますが、弱視者は視覚障害者誘導用標示の色を見ながら歩くことが多いのだそうです。

 ではすべてが黄色で良いかというとそうではないようです。あくまでも、視点は周囲の路面と区別しやすいことが重要であり、明るい色のタイル(又はブロック)上に黄色い視覚障害者誘導用標示を設置するのは、必ずしも正しくはないのです。黄色が多いのは、一般的に黄色を設置した方が良い場所が多いということです。

 ここで注意しなければならないのは、色差ではなく輝度比で評価するということです。一般的に弱視者は色差が大きいよりも輝度比が大きい方が、ものを識別しやすいと言われています。また、地の色が暗い色(輝度が低い色)に対して、標示や文字が明るい色(輝度の高い色)の方が識別しやすいという実験結果もあります。自治体によってはガイドライン上で輝度比を2.0程度または2.5以上としているところもあり、ISO/TC173(身障者用福祉機器のISO規格)などでも輝度比を検討しているそうです。

 詳しくは、「輝度比とは?」のページへ

 街の美観を損ねるから、という理由で弱視者には厳しい街づくりと、美観を少々損ねても、弱視者への配慮に厚い街づくり。どちらがより美しい街なのかは言うまでもありません。

通常のイメージ写真
説明
輝度イメージ
※ 輝度をコンピュータ処理で標示したものであり、 弱視者がこのように見えている訳ではありません。

通常のアスファルト舗装に対して、黄色い視覚障害者誘導用標示を設置した場合のイメージ。

輝度で見るとよく判別できる。

明るい色のインターロッキングに対して、黄色い視覚障害者誘導用標示を設置した場合のイメージ。

色では判別可能だが、輝度で見ると分かり難くなる。

通常のアスファルト舗装に対して、暗い色の視覚障害者誘導用標示を設置した場合のイメージ。

色では判別可能だが、輝度で見ると分かり難くなる。

明るい色のインターロッキングに対して、暗い色の視覚障害者誘導用標示を設置した場合のイメージ。

同系色であっても、輝度で見ると判別できる。

通常のアスファルト舗装に突起部分だけに色が付いた視覚障害者誘導用標示を設置した場合のイメージ。

輝度でみると特に警告の部分が分かり難くくなってしまう。

一番上のイメージを夜間の照明で見た場合。

輝度で見ても判別できる範囲内である。

視覚障害者誘導用標示の色を設定する場合には夜間における配慮も必要である。