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すべり止め舗装(すべり抵抗値とは?)

 すべり抵抗値(Skid Resistance)とは舗装面と自動車のタイヤ等との間に発生する摩擦抵抗値のことです。摩擦抵抗値が大きければ自動車はスリップしにくくなり、小さければスリップしやすくなります。車道舗装のすべり抵抗の評価としては1989年9月に東京都土木技術研究所から、特性試験車を用いた方法が発表されています。これはASTM(American Society for Testing and Materials)でも規定されている方法で、実物大の車輪を牽引して、濡れた路面上で車輪をロックしたときの摩擦係数を測定します(舗装試験法便覧,日本道路協会,S63.11_6-5舗装路面のすべり抵抗値の測定方法)。この測定値の摩擦係数を100倍した値を"Skid Number(SN)"と言います。実際に走行している車両が受けるすべり抵抗値に近い測定値を得ることができるため、本来ならこの方法ですべり抵抗値を測定すべきなのですが、機材が非常に高価であり、又一般公道での測定には向いていないため、一般的には"Portable Skid Resistance Tester"や"Dyinamic Friction Tester"を用いた方法が採用されています。

  "Portable Skid Resistance Tester"はイギリスで開発された方法で、この方法で測定された値をBPN(British Pendulum(Tester) Number)といいます。この値は摩擦係数の約100倍に当たりますが、路面温度や使用ゴムの材質によって測定値が大きく左右されるため、温度補正をする必要があります。測定は振り子の原理を応用した方法で、振り子形の重錐を路面を滑走するように振り下ろして、路面のすべり抵抗を計ります。通常はこの測定値に対して温度補正を掛け、20℃時の値としてまとめます。温度補正値は2次曲線に近似しており、2次方程式等によって近似的に求められます。しかし、こうして求められたBPN値も正確とは言えず、測定者による誤差も大きいことから、定性的なチェックとして用いられることが多いようです。

 温度補正式(日本道路公団)
(舗装試験法便覧,日本道路協会,6-5舗装路面のすべり抵抗の測定方法:P969)
C 20 =-0.0071t 2 +0.9301t-15.79+C t
 C20 :20℃に補正したBPN値
 Ct :路面の表面温度t時のBPN測定値
 t :路面の表面温度(℃)

  "Dyinamic Friction Tester"は日本で開発された方法で、一般には「DFテスター」と呼ばれています。1997年12月にはASTMでも規格試験として採用されました(E-1911-98)。直径50cmくらいの円盤に標準タイヤ(世界的に統一された規格で作成されたタイヤ)のゴムと同じゴムの小片を3個取りつけて、路面に押しつけてモーターで回転させ、そのときの抵抗値で摩擦係数を出します。特性試験車で測定した値と区別するために、RSN(Rolling Skid Number)といいます。またモーターの回転速度を変えることによって車の速度もシミュレートできます。自動車のバッテリーでも駆動でき、乗用車のトランクにも入る程度の手軽さです。計測値もBPN法に比べるとずっと信頼性が高く、特性試験車との値の比較では40km/h、60km/hで高い相関関係があります。温度補正などはこれからの課題ですが、今後この方法による測定が増えていくと考えられます。日本で開発されただけあって、取り扱っている会社も多く、"Portable Skid Resistance Tester"よりは入手しやすい状況になっていますが、"Portable Skid Resistance Tester"に比べると機材の価格はほぼ倍になります。日邦産業株式会社株式会社サントップテクノ大和建工株式会社などはホームページ上でも紹介しています。(舗装試験法便覧別冊(暫定試験方法),日本道路協会,H8.10_4-1-1T回転式すべり抵抗測定器による動的摩擦係数の測定方法)

 寒冷地においては日常のスリップの度合いを測定するものとして"G-Analyst"を用いることがあります。これはすべり抵抗というよりも、車にかかる、前後、左右、上下の加重「G」を測定するもので、車内に搭載して一定速度から急ブレーキ(タイヤロック)したときの値を測定します。これも車内のシガー電源を使用でき、手軽なため、すべり具合をアスファルト道路などと比較測定するのに適しています。ただ、厳密なすべり抵抗値ではなく、また後続車等がある場合は危険を考慮して測定できないため、すべり止め舗装の厳密な評価としては不向きです。

 実際に弊社で"G-Analyst"を用いて測定した結果をここ(PDFファイル) においておきます。この方法を用いたときの値が0.15(G)以下になると一般的に車がスリップするようになります。